詩人・金芝河さんの代表作「五賊」、日本で初上演へ−−東京で来月6日
◇「五賊」…財閥・国会議員・高級公務員・将軍・長官次官
◇民主化闘争、象徴的存在−−金芝河さんの詩を原作に
軍事独裁時代の韓国で、金大中(キムデジュン)・現大統領とともに民主化闘争の象徴的存在だった詩人、金芝河(キムジハ)さん(57)の代表作「五賊」を、朝鮮の民俗芸能「パンソリ」で日本で初上演する計画が在日韓国人のオペラ歌手、田月仙さんらの手で進んでいる。12月に初来日の予定の金芝河さんを歓迎する気持ちを込め、「抑圧の時代に自由を求めた詩人の心を日本人に知ってもらいたい」という。
<ソウルは都のど真ん中。5人の泥棒、住んでおったとさ>
<姿かたちはけだものながら、まこと豪華けんらんたるけだものなり>
「五賊」とは、財閥、国会議員、高級公務員、将軍、長官次官という名のけものの姿をした5人の盗賊のこと。朴正煕政権下の1970年、金芝河さんは特権階級を痛烈に批判したこの長編詩を発表した。その後、7年近い投獄生活を送り、死刑宣告まで受けた。
詩が発表された時、田さんは小学校高学年だった。高校卒業後、音楽の道に進んでから、じっくり読んだ。「ウリマル(祖国の言葉)にこれほどの風刺力があるとは」と驚き、83年の初リサイタルには金芝河さん作詞の曲を選んだ。
一方、田さんと共に上演を企画した劇団「新宿梁山泊」座長、金守珍さんは16歳でこの詩に出合い「日本は仮の国、日本人に負けるものかと凝り固まっていた心が解けた。求めるのは精神の自由であり自分自身の探究」と話す。
パンソリは物語に節を付けて歌う朝鮮の民俗芸能。87年に「五賊」が解禁になり、何回かパンソリで上演されたが、最近は韓国でもほとんど上演されることはないという。今回は当時の歌い手が出演する。
金芝河さんは90年代に入り、過激な学生運動を批判して学生の反発を受けた。「方向転換」と言う人もいた。田さんは今年3回、ソウルの家を訪ね、「詩人の目は澄んでいる」と感じた。「権力に抵抗したエネルギーを私たちが受け継いでいきたい。だからこそ、この作品を上演したい」
金芝河さんは、12月4日、川崎市内で開かれる世界人権宣言50周年のイベントで講演する。「五賊」上演は6日、東京都千代田区のイイノホールで。本人の舞台あいさつも予定されている。
■写真説明 「日本を訪れるのが楽しみ」という金芝河さん(右)と上演の打ち合わ
せのため訪れた田月仙さん=ソウルの金さん宅で今年